A white goat with the girl 1

「白山羊さん、どこに行くんでやんすか?」
「あー?ちょっと知り合いの牛んとこや」
「牛さんのとこでやんすか?丘を越えたブナの木の下に住む牛さんのとこでやんすか?」
「そうや。何や知ってんのかいな?」
「へぇ、あの牛さんにはいろいろ世話になりやしたから。もしよろしかったら、わっちも一緒に行っても構いやせんか?」
「構へん。好きにしたらええ」
「じゃあ、お言葉に甘えて・・・」

少女は季節の花をとりに丘へ散歩に出かけていました。
その途中、白山羊さんと出会い一緒にブナの下に住む牛さんの所に行くことにしました。

「でも、何で白山羊さんは牛さんのところへ行こうと思ったんでやんすか?」
「理由がないとアカンのかいな」
「いーえぇ。ちょいと気になったまででして。答えたくなかったら、答えなくても構わないでやんすよ」

白山羊さんは、首にぶら下げた袋から煙草を取り出すと、美味そうに一口吸うと、ぽつぽつと話し始めました。

「・・・牛がな、今週末に屠殺場に行くんやと。屠殺場って知っとるか?」
「へぇ、食肉にするところでやんすね」
「そうや。ブナ牛にも、とうとうお鉢がまわってきたんや。
ヤツは観念したらしい。けど、やっぱり死ぬのは怖いと。それで今日、自分の友達を集めて<最期の晩餐>をするらしいんや。牛のくせにキリストの真似事しよるのも笑えるがな」
「ふむふむ、で白山羊さんもその<最期の晩餐>に出るために牛さんのところへ行くんでやんすね?」
「・・・まあな・・・」
「でも、淋しいでやんすねぇ・・・」
「そんな事あらへん。人間を見てみぃ。何だって食べるやん。肉も、舌も、筋肉も、はらわたでさえも・食べへん所は脳ミソだけちゃうか?美味しく食べられて、そいつの血なり肉なりになるんやったらええやないか。そうでも思ってなかったら、やってられへんわ。生きるっちゅうことは命を奪って喰うことや」
「・・・そうでやんすねぇ・・・美味しく食べないといけねぇでやんすね」
「・・・そうや。美味しく食ってくれ」

二人は牛さんの家につきました。少女は持っていた花を白山羊さんにあげるともと来た道を帰っていきました。
その翌日、牛さんは見事なお肉になって焼肉屋さんで焼かれました。


鷲羽

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