A white goat with the girl 2

「・・・なんや、また泣いてんのかいな?」
「あ・・・白山羊さん・・・」

少女は家の近くの野原で、たくさんの野花にかこまれて泣いていました。
赤いスカートを花びらのように広げ、顔を覆って独り悲しく泣いていたのです。
そこに散歩途中の白山羊さんが通りかかったのでした。

「あ?今度は何や?パイ焼くのに失敗したか。それとも飼っとった鼠が死んだか」
「違いやす・・・ねぇ、白山羊さん。何で人は争うんでやんしょう?」
「・・・・・はぁ?」
「ですから、何で仲良く出来ねぇでやんしょ?」

白山羊さんは、少女の隣に腰掛けると、首にぶら下げた袋から煙草を取り出し、一口深く吸って吐き出しました。

「そんな下らんことで泣いとったんかいな。アホやなぁ。相変わらず。
ええか、みんな仲良しこよしやったらキショイで。人間なんて争う為に出来てるんや。アンタかて人を妬んだり、羨んだり、憎んだり、嫌ったりするやろ」
「そうでやすが・・・でも、仲良くする方法はないんでやんすか?」
「大脳が違ったら、違うモノや。自分やないから嫌ったり、憎んだり、価値観が違ったりするんや。大脳が違うから、自分やないから好きになったり、愛したりするんや。みんな一緒やったら機械と同じや。製品番号が違うだけやん。
泣いとる人の数と同じくらい笑っとる人がおるんや。世の中バランスやで。戦う奴がいれば愛し合う奴もおる。相反するものは棒の端っこと端っこちゃうねん。コーヒーにミルク入れた時みたいに渾然一体となっとるんや。
仲良うする方法は・・・価値観の相違を認める他ないんちゃう?俺は山羊やから、人間のことはようわからんけど」
「・・・白山羊さんの言ってることは、よくわからねぇでやんす。けど、何となくわかりやした」
「・・・どっちやねん・・・」

夕暮れになり、少女は白山羊さんに別れとお礼を言い、お母さんの待つ家に帰りました。
白山羊さんは野原に寝転がり、少女の帰り道を見守っていました。

その数時間後、少女のお父さんは隣国との戦争の前線で戦死しました。
爆弾で木っ端微塵になったので遺体もなく、少女の家には遺品しか届きませんでした。
次の日、白山羊さんと少女は一番高い丘に登り、前線の状況を双眼鏡でずっと眺めてました。


鷲羽

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